COLUMN|音楽の日記。そしてレコードを聴いてる今日もvol.0
2018.03.31

2001年の3月に中古専門レコードショップ「Lights out records」をオープンさせて以来この十数年自分のコレクションを増やす、または集めて楽しむという事を忘れていたように思う。

それはお店が邪魔するというか、例えば都内のレコードショップに行って自分のためのdigだとしても結果このレコードのこの値段ならうちの店で出せるなとか、買っても結局後にお店に出すだろう?

という余計な考えが出て来て結果シラけて買わずにお店をあとにするというパターンが続いたのである。海外のマーケットをネットで探しても同じ事だった。

お店に出す商品でも買う喜びは買う事で満たされてはいたが、コレクションをするという喜びは無に等しく、それは十数年続くのであった。

大好きな音楽とレコード。音楽は側でつねに鳴っている、毎日レコードは僕の手にあって針は何時だって溝に沿って回っている。

好きな音楽の話をお客さんといつまでも話す。お勧めのレコードを気に入ってもらえたら、または欲しかったレコードを僕の店で探し当てたのであれば購入して頂けたりもする。

上記でも述べたがお店に並べるレコードは新譜では無く中古である為、僕の判断で(好きなもの)レコードを仕入れする事に買うという喜びは満たされていた。

それは下手したら毎日何時間も朝方まで海外のあらゆるショップをチェックするし個人的なディーラーに連絡を毎日し続けて探してるものを見つけ出す。

毎日好きなレコードを買うというレコード三昧な日々なのである。

まあそれで仕事として生計がしっかり立てられるか?とかはまた別の話として、

レコードショップは僕には楽しい仕事ではあるので何となくやめる事無く続けていたのだが何かが欠けていた。

もう完全に錯覚に陥ってた。

毎日レコード探しと大量の海外から届くレコード。

それを買っているという喜び、これ錯覚。

お店にはレコードが並ぶが自宅には自分のコレクションは増える事無くむしろお客さんの仕入れて欲しいレコードの要望、あるいはその月に良い仕入れが出来なければ

自分のコレクションから目玉的な珍しいレコードを泣く泣く抜いてお店に並べたり、注目されればされるほど毎月皆が楽しみにネットショップ更新や入荷を待ってるのだというプレッシャー。

どんどん自分のレコード棚は減って行く。

レコード屋ではあるけど僕もレコードが好きなのだ。毎日レコードは見ている、なんならヴィニールの匂いも嗅いでいる。

ちょっと話逸れるが匂いは面白い。例えばスペインとかからのレコードを仕入れるとたまに甘い香りがしたりする事がある。

多分お香の香りなのだろうけど、向こうにはお香を焚く文化があるのかしら?

その他にアフリカとかのレコードだとまるで都市伝説みたいだけれどネズミの糞やカビとかで僕と同じように匂いを嗅ぐのが好きな人が変なウィルスもらったとか?なんて話も。

と考えると嗅ぐのはあまりお勧めはしないけど。

話を戻すと僕もレコードが欲しいのであって自分のコレクションを増やす喜びを取り戻したいのだ。

レコード屋失格なのである。

ここ数年前から僕の中で好きな音楽のジャンルの変化がおきていた。

それは今までのように昔の海外の音楽ばかりを聴くのでは無く、今現在活動してる国内のアーティストやバンドを聴くようになっていた。

もっと言っちゃうと(聴けるようになっていた)

しかも聴けば聴くほど知れば知るほど国内のインディーな音楽に夢中になった。

そして身の回りの地元のアーティストやバンドにも凄く良いものがあると知った。

もっと知りたくて自分の店で好きなアーティストやバンドを呼んでラウンジライブを始めることにした。

となると彼らの作品を自分のお店でも取り扱いたくなるって事。

これだ!と僕は思ったのです。

2016年半ばに思い切って今までの中古レコードをやめにして今活動している国内のインディーなアーティストとバンドの新譜を取り扱うお店に

ガラリとかえようと決心した。となるとやはりCDが多い。今までのような沢山レコードを聴いて来た方達と接する感じでは無く、

音楽を聴き始めて今まさに自分の好きなアーティストやバンドを探す喜びを持った若いお客さん達がやって来るようになっていた。

新譜ではCDは勿論だがレコードでリリースするアーティストやバンドも多い、最近ではカセットでのリリースも増えている。

レコードに関しては今までの中古のみでの時のお客さんやDJも注目してるみたいだった。

新譜を取り扱うようになると上記のような若いお客さんの他にバンドをする人達も沢山来るようになった、

お店には大型店には無い本当の意味でのインディー(自主)作品をなるべく取り扱うようにしていたせいもあるのか、

今活動してる同世代の作品をチェックしてる様子だったり、自分達の作品を売り込みに来たりと中々熱いものを僕も感じたりして

仲良くなったり、また彼らの音楽を好きになったりも。

そんなレコード屋としての新たな生活が始まったのだ。

これで良い。

この感じが今の僕にあってると。

今を活動する音楽家達の作り出す音楽に僕も夢中になれるならレコードショップを続ける意味はある。

ついに先日レコード屋だからと置いといたほんの少しの珍しくもない昔の中古のLP盤を店頭から外した。

そして僕はようやく十数年ぶりにレコードをコレクションする事の出来ない呪いを解く事が出来たのである。

少しづつまた自宅のレコード棚にレコードが増えていく喜びを手に入れた。

なぜ僕はレコードショップを始めたのか?

 

 

菊池英昭
2001年から水戸市内でLights out recordsというレコードショップを営んでる音楽好き。お店には現在活動するアーティストやバンドの作品をおもに取扱中。お店の中にあるあまり大きくないラウンジスペースで様々なイベントを開催中。
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