COLUMN|音楽の日記。そしてレコードを聴いてる今日もvol.1
2018.07.19

前回ではお店の事、僕のレコード欲しい病気の事を書いてみましたが、今回は、というかこれからの間、僕の周りに居る音楽というジャンルで面白い事やってる人や興味のある人の話を聞いてみようと思います。

所謂対談をしてみたいのです。

対談の第一回目は、都内を中心に活動中のCHIIOというバンド、そのギタリストの北山君にお話を聞く事にしました。

去年の夏位からラウンジ(当店ライツアウトレコード内にある小さな多目的スペース)で毎月第三水曜日におこなわれてるパーティーがある。「HOW DO YOU LIKE WEDNESDAY?」というタイトルの入場無料のパーティーなのだが、このパーティーが面白い。これからラウンジ、いや音楽シーンに与える影響?少なくてもこのラウンジで新しい何かが始まってるというワクワクする感じ。僕には重要なキーワード、パーティーという言葉、現場、超現場、その現場でおきる音楽を通した出来事、パーティーをする意味。
ある日彼がパーティーをしたいと言い出した、DJのパーティーを。
タイトルは「HOW DO YOU LIKE WEDNESDAY?」
なぜ始めようと思ったのか?いったい彼の考えるパーティーは?どこにこれから向かうのか?

実は対談でも本当は北山君との出会いとか、初めて会話したときのお互いの印象とか、彼の参加するバンドCHIIOの結成当初の頃の話とか、彼が都内から水戸に帰って来た頃の話とか沢山話を聞いてるのですがその辺は全て割愛しまして、彼が今バンドで活動しながら都内や地方でおきてる出来事に対して感じてること、そして水戸でパーティーを始めるまでの流れを中心に載せてみようと思います。

菊池:ライツアウトの最近のいくつかあるポイントとして今、北山君が主催する水曜日の「HOW DO YOU LIKE WEDNESDAY?」がライツアウトラウンジにおいて、なくてはならないレギュラーパーティーになってると思ってるのですが、そこに行き着くまでの流れみたいな事やこれからどこに向かって行くのか?等の話を聞いて行こうかなと思ってるのね。

北山:ういっす(笑)

菊池:僕が勝手に思ってたのは、若いバンドの人達はクラブやDJ文化にはあまり目を向けないなとずっと思っていて、ライツアウトラウンジという場所を作って最近まで若い方達、それこそ今を活動する20代のバンドマンの方達でもっと音楽で上を目指したいって言ってる人達とかがクラブやDJに対してはあまり興味が無いように思ってて、演奏する、生演奏を観ることと、DJが選曲する音楽を楽しむことというのは全く交差しないんだなって思ってたんですよね。
で、例えばDJの方達はDJだけか?といったらそうでも無くてラウンジで行われるライブ企画等にも足を運んでくれてて音楽全体を楽しんでる印象なんです。
で、僕は今までそういう感じにバンドでもっと上を目指したいとか言ってる人達って意外に音楽を楽しむって事では狭いな~って勝手に思っていたわけ(笑)
で、それをね、北山君がぶち壊してくれたと(笑)

一同:(爆笑)

菊池:(笑)北山君がある日パーティーしたいですって言って来たんですよ。所謂バンドマンが演奏する、それを誰かが観るということが主ではなくて、DJがあって誰かが選曲する音楽と会話を楽しむってことをしたいと。
それってやっぱりどこかで何か?見て来た何かがあると思うんですよね。

北山:まずカセット(注1)を出した頃、僕らCHIIOの拠点と言うか、よく出演してたのは吉祥寺WARPとか下北沢ERAといった所謂Rinky Dink系列のライブハウスなんですけど、誰もがイメージするような王道的ライブハウスという感じで、それはそれで凄く好きだったんですけど、そのあと下北沢THREE(注2)に出演する機会があって、そこでTHREEに出入りしてる人達を見て他とは少し違う空気感を感じて。スタッフさんのほとんどがバンドやDJをやっていて、スケジュールには連日のように深夜のDJイベントも入ってるし、基本的にバンドのライブとDJがどっちもあるうえで一つのイベントが成立していて、そしてそれが毎日のように開催されてるのが当たり前になってる感じとか。普通のライブハウス、特にブッキングのイベントとかってライブがあったらライブだけ、みたいに思ってたんですよね。THREEのイベントはブッキングがほとんどないってところだと思うんですけど。
あとTHREEの独特のあの空間の箱の形とか面白くて、そこである日 VIENDA!ってDJパーティーがあって、そのとき菊池さんも一緒に行ってたと思いますがKONCOS(注3)出てた日がありましたよね?
あのとき深夜イベントで正直そこまでお客さんで埋まってる訳じゃ無いけど、あーいう遊び方っていうか、DJのパーティーの中でゲストライブがあって、っていうのはその頃の僕にとっては新しくて。
そしてTHREE店長のスガナミさんやKONCOSがMC中に”パーティー”ってよく言ってて…。僕パーティーって言葉に全然馴染みがないというか、よく意味が分からなくて(笑)
なんか二十歳そこそこの頃に、パーティーと言われても、むしろ「いや、俺そーいうのいいわ」みたいな(笑)その位、流れてる音楽に対して僕が踊るとか盛り上がるとかっていうのは無かったし、まあ音楽を部屋で聴くのはずっと好きでしたけど、それを皆で共有したりとかは無くて、そんな中バンドがあってTHREEと出会ってKONCOSと出会って。
で、もう一つイベントを始めたキッカケがあって、宇都宮にsaidっていう22~23歳位のバンドがいて、その子達が毎年地元の宇都宮でやってるフェスにCHIIOで呼んでもらった事があるんです。多分saidは高校生の時から都内や地方のバンドを呼んでて、それと地元の先輩や後輩バンドと交ぜてフェスというか、結局それもパーティーだと思うんですけど、若いのに早くから面白い事やってるな~って思って。
僕たちとその時一緒に出演してたLucie,Tooって女の子3人組のバンドがいて、今ではテレビに出たりして下北沢界隈では知らない人は居ないんじゃないか位になってるんですけど、その子達もずっと宇都宮と都内を拠点に活動してて、その先輩後輩であるsaidとLucie,Tooは縦の繋がりが凄いグルーヴあって(笑)あと音楽を凄い共有してる感じとか、あのバンドの新譜聴いた?とか最近誰を聴いてるんですか?とか。音楽の話いっぱいしてるな~と。
そのLucie,Tooってバンド名なんですが、僕も好きなバンドで”Now,Now”ってアメリカのインディロックバンドがいるんですけど、そのバンドの曲名に”Lucie,Too”ってあって。今二十歳そこそこの女の子達がそこからバンド名取ってバンドをやってるとか渋いな~とか、なんかスゲーいい話だなって思って。
あとハロードリーってライブハウスのファミリー感だったり、皆が使ってるスタジオのアットホーム感とか。そういうのを全部ひっくるめて、みんなで音楽を共有しながら自分達や地元の未来にちゃんと繋げて行けるようなイベントを着実に積み重ねてやってきてるのを見たときに、ヤベー水戸いま完全に負けてるかもって思ったんですよ(笑)
ヤベー何にも出来てねー、残せてねーみたいな(笑)いやそれは街に対してというかは、自分に対してなんですけど。
よくドライブに連れてってくれた先輩がいたり、僕自身も後輩と遊ぶのは好きだったんですけど、なにかそれがそれぞれに還元されてく活動って出来てないなと思って。
自分は東京でライブしてるんで東京によく居るけど水戸から遊びに行ってるだけ、自分だけが、それってなんか凄くもったい無いなって思ったんですよね。

菊池:じゃあ、そこからやってみようと思ったって事ですよね?

北山:そうですね、いざ始まるまでには約半年位かかりましたけど。

菊池:始まるまでには時間が少しかかったけど、常々話してはいたんだよね、お客さんは入らなくてもいいから面白い事やってみようって(笑)北山君の情熱というか、下北沢だったり宇都宮だったりを見て来た事を自分なりに消化して何か試してみたい感じはやはり出てましたもんね。
で、やり始める訳ですが、始めてみてどうだったんだろうか?

北山:初回は2017年7月でしたが、結構唐突にやり出したって感じですよね。いきなりのわりに遊びに来てくれたお客さんも結構居て、終演時間過ぎても皆帰らなくて(笑)

菊池:(笑)さっき北山君が言ってましたが、下北沢だったり、宇都宮だったり色んな現場を観て来て水戸でも何かをやりたいと思った訳だと思うんですが、それはバンドのライブ企画かと思いきや、DJパーティーを始めたって所が面白いと思ったんですよ(笑)演奏じゃないんかい!って笑って(一同笑)
そしてお客さんも蓋をあけてみたらDJの方達よりもバンドマンが沢山やって来て、演奏する訳で無くDJ、音楽を選曲して、聴いて楽しんでる印象で、この「HOW DO YOU LIKE WEDNESDAY?」一体なんなんだろう?って(笑)ついに水戸のバンドマンがパーティーとかって言い出したぞって(笑)
それってなんて言うか、ラウンジで新しい何かが始まってるというワクワクする感じがしたのね。例えば演奏だとして小さい場所なら場所なりにライブのやり方があると思うし、そーいう事を出来るノウハウも持ってると思うのですが何故演奏を入れずにDJ企画にしようと思ったのかな?

北山:そうですよね(笑)今までDJやった事無いですし、レコードを集めてた訳でも全然無いですし…。でもなんか、バンドのライブってその人の事があまり解らないままってゆうか、僕はもっと知りたいって思っちゃうんですよね。その点DJって形でやると今まで自分が聴いて来たものも共有出来ると思うんですよね。
バンドマンに(DJを)やらせる事でその人の事が解るとも思うし。あとバンドのライブだとどうしても絶対数が決まってるじゃ無いですか?活動してるバンドの数が。
多分半年位イベントやったら水戸のバンド一通り全部出ちゃうなみたいな(笑)

菊池:確かに(笑)

北山:その伸びしろ考えたときにDJをバンドマンに、あと音楽好きの友達にやらせたら可能性が無限大だと思って。

菊池:例えばDJした事無い、又は誰でもいいからDJさせてみるってのは結局数回続けるとシラケてしまうパターンもラウンジで沢山みて来て、やはりイベント自体続かないし、あまり面白い結果は産まない事が多いんだけど、じゃあ何故この「HOW DO YOU LIKE WEDNESDAY?」がシラケてしまわずにずっと面白いまま続いてるのかっていうと、とりあえず誰でもいいからではない選び方だと思うんですよ、やはり北山君が興味のある人を選んでるって所が面白いと思うんだ。この人の事をもっと知りたいっていう。ある意味しっかりとしたコンセプト的というか。
あとDJに選ばれた方達ってバンドマンばかりでは無いと思いますが、バンドをしっかりとやり続けてる人達がこのパーティーでDJした後にけっこう本気でDJというものにハマってたりして。例えば、「HOW DO YOU LIKE WEDNESDAY?」に出演したあるバンドマンのDJが凄く良いという事で他のクラブでのDJイベントに誘われたり、逆にライブの企画にDJの人達がライブハウスに遊びに来たり。結果次に繋げてると思うんだよね。

北山:そうですね、イベントやるからには統一感というか、僕なりの色?は出したいなって思ってました。
すごく簡単に言うと、”あのバンドの、その中でもこの人がDJやってくれたら面白そう!”って所で声かけさせてもらってます。自分の好きな事において、意外性があるものが好きなので。
それとバンドマンだけじゃなくて、水戸でお店やってたり、ライツアウトで遊んでる面白い先輩達にも出て頂いてます。
このイベント通していろんな名場面観てきましたが、親子DJの回とか、夫婦DJとか。面白かったですよね。

菊池:ああ、あったね!それにしても何故水曜日なんだろう?

北山:これはもう、僕の願いというか、日本のライフスタイル的に皆が、週の真ん中から遊べる暮らしであって欲しいってのもあるんですよね(笑)平日なら遊び行けるって人もいるだろうし、平日にしかない盛り上がりがもしかしたらあるのかなっていうのもありますね。
もっと話を広げて言うとやっぱりイギリスとか行ってみて思ったんですけど音楽っていうものが暮らしの中で占めてる割合というか、そのバランスがこう、凄く日常の中にあるっていうか、まあ歴史が違うじゃないですか?ロックだろうとなんだろうと。
やっぱり、まだまだ日本は「まだ音楽やってるんですね?」「自由でいいですね」みたいな言われたりするじゃないですか。悪い事みたいな(笑)そーいう時代があったのも勿論知ってますけど。もうそんな古い価値観じゃ無くて、皆、働いてるけど平日から遊ぶし、音楽もやるし、DJもやるし、パーティーやってるし。ていうのを続けて行ければ、長い目で見たら日本の音楽ももっと世界的にメジャーな物になれるんじゃないかな?みたいな。海外に負けたくない、みたいなのあるっすよね、やっぱり(笑)音楽って本当に身近なものだし。

菊池:この水曜日って最初は誰もDJ経験無いままパーティーしようって始まって、少しづつDJの面白さや、パーティーの楽しさを北山君一人ではなく、遊びに来た人やDJに選ばれた人皆が回を重ねるごとに少しづつ成長してるように感じてて、どんどん遊び方を覚えて来て、それこそ水曜日の真ん中から遊べる暮らしというか、音楽がある生活が身近なものになってるって感じはしますよね。

では最後に、これからこのパーティーをどうして行きたいとかありますか?

北山:そうですね、とりあえず毎月一回、それで一年は絶対続けよう、って目標で実は始めたんですけど。いま考えてるのは他の土地でこのパーティーをやってみたいなって思います。
例えば新潟とか、仙台とか。単純に旅行も好きなんで。水戸の皆と遊びに行って、その土地の人達とパーティーして、おいしいご飯食べて帰るっていう。最高じゃないですか?(笑)それと同じように、都内や他県にいる友達を水戸に呼びたいし、茨城に遊びに行こうっていうキッカケになってもらえたら嬉しいですね。なんか面白いレコ屋が水戸にあるらしいよ?って。(笑)

end.

(注1)北山君が参加するバンドCHIIOの2016年5月にリリースされた1st カセット作品。
(注2)ロックをはじめ、さまざまなジャンルの音楽イベントを開催するライブハウス。週末はクラブ営業を行い、朝方までオープンしている。
(注3)全国各地のライブハウス、クラブを中心にライブを続ける、Keyboard、Guitar、Drumsの3ピースバンド。

■北山裕人(キタヤマヒロト)
プロフィール
音楽とサッカーが好き。東京を拠点に活動するバンドCHIIOではギターとシンセサイザーを担当。地元の水戸で2017年夏より入場無料のマンスリーパーティー”HOW DO YOU LIKE WEDNESDAY?”を開催している。

菊池英昭
2001年から水戸市内でLights out recordsというレコードショップを営んでる音楽好き。お店には現在活動するアーティストやバンドの作品をおもに取扱中。お店の中にあるあまり大きくないラウンジスペースで様々なイベントを開催中。
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